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いずも計画に見る局地運用レイバー事情

漫画版パトレイバーの11巻と12巻にて描かれた「いずも計画」の物語から、局地運用レイバーの開発について考えてみたい

協力企業12社、協賛企業48社。これは2000年、年明け時点でのいずも計画に携わっていた企業の数字である。

四菱グループ主導で行われていた「いずも計画」。2000年の年明けカウントダウンでは宇宙空間でのいずも一号による動作が生放送され、その計画の順調さを内外に知らしめた。それに続くいずも二号の盗難事件などはあったが、開発者、技術者、企業家、誰もがその計画に野望や夢を見る。

レイバーとは即ちマニピュレータの一種であるがその特性上、局地運用が前提となる。多足歩行、多方向搭載広角カメラ、電探、赤外線装置…それら全てがレイバーがレイバーたる所以である。

大量生産を前提としない局地運用は、企業の技術力を宣伝するのに適している。何故かといえば、開発費や技術者の人件費のみにコストを割けるからである。大量生産を前提に、となると工場の生産ライン、パーツなど全てをシリーズ毎に新しく構築しなければならず、そのコストと言ったら、車の場合でも企業家がダース単位ですっこける金額である。

以上を踏まえれば、レイバーというのは実に企業の宣伝にはお誂え向きのものであるといえる。先に挙げたメリットの他に、見た目のインパクトや技術の潰しが利くことなど……尤も、実際にやるとなると技術面でのハードルが高すぎて開発・実験予算を割くだけで一杯一杯であるが、動物の形に近い機械が動く姿というのは見ていて実に壮観である。それが二足歩行ともなれば尚更。

実際の研究開発はというと、技術者の育成やその技術の流用まで視野に入れている場合が大半である。パトレイバーの世界では車などと同じ捉え方をされているレイバー。大学などでも専門学科が存在している程のポピュラーさであるから、我々の現実世界と比べるにはそもそも技術レベルの桁どころか格が違う。にも関わらず他の機械はあまりハイテク化されていないので、産業格差というものが存在しているようである。

企業全体の関心がレイバーの局地運用などのプロモーションによってレイバー産業に向いているための格差であると思われるが、株価などがどうなっているのか興味深いところである。

いずも計画そのものに話を戻しますが、宇宙ステーションとの共同運用が目的とされているようである。いずもシリーズは宇宙空間での運用が前提であるので、人型とは大きく形が違っているが、その企画のスケールにより産業活性化の要因としては充分である。

現実の話に戻せば、局地運用作業用機械というと月面や水中といった人間では不可能な作業現場での作業を目的として作られているが、後者はともかく前者となると、”その機械を現場にもっていくこと”自体が難しい。即ち、宇宙空間まで飛ばす必要があるのだが、宇宙進出の前に大きく立ちふさがるのがそのコストの大きさである。これは既に国家一つが傾くといって過言ではないスケールであり、冷戦時代にはこの開発競争によってアメリカやソ連全体の経済が逼迫し、ソ連に至ってはその痛手をロシアと国名を変えた今でも引き摺っている。

今後、こういったコストがどのような技術によって解決されていくのか、興味深いところである。

次回はまたソフトの話に戻り、オリジナルソフトの開発に眼を向けてみたい。

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