「お〜い、遠野ぉ〜〜!!!」夏休みの終わりを告げる終業式。その帰りに自称親友の有彦が校門を出た辺りで声を掛けてきた。「進路の先生に聞いたぞ!就職先決まったんだってな!?」「就職先っていっても、まだ試験もやってないんだぞ。気が早すぎるよ」「まぁ、硬いこというなって。お前なら面接官の受けだって良いって。絶対な!」「うん、サンキュな…」「おっ、珍しく素直じゃねぇか。お兄さんは嬉しいぞ!!」「いつからお前は俺の兄貴になったんだ?」「まぁ、まぁ」「まったく、お前は気楽でいいよな。専門学校に行って、しばらくは就職しなくていいんだものな」「へへん、世渡り上手と言ってくれい、まい・ぶらざ〜」俺の首に手を回し、怪しい目つきで言う。「うがっ、気色悪いなぁ〜…」「遠野君!」「「どわぁっ!?」」突然の声に有彦共々驚く。この声と登場パターンは…「先輩じゃないですかぁ!!」先に口火を切ったのは有彦だった。普段自分の姉にいびられているだけあって、こういうときの立ち直りは早い。思い返せば、俺とシエルが付き合っていることを知った直後も、こいつはこうやって直ぐに立ち直った。「わざと気を利かせているのか?」と一度聞こうかとも思ったが、それは聞かぬが華というものだ。もしかしたら本当にこういうやつなのかもしれないし…。振り返ったところに立っていたのは、有彦の言う通りシエルだった。今日も教会に行っていたようで、シスター姿だった。「今日はまたどうしたんです…って、あ、そうですよね。折角こいつが午前放課なんですもんね。じゃ、俺は用事があるんで、そいじゃ、先輩、またぁ〜〜〜!!!」呼び止める暇を与えないスピードで去っていく有彦。「「………」」「有彦君も相変わらずですねぇ〜」「…あの馬鹿……」「ふふ、そこが彼の良い所、ですよ」「ははは、まぁ、そうかもな」「それじゃぁ、これから私の所でお昼といきましょうか?」「最近、シエルのとこばかりで食べてたから、昨日、使用人の琥珀さんに『志貴さんが食べてくれないと、作り甲斐がないですよ〜。秋葉様もあまりお食べにならないし、翡翠ちゃんもまかないを作っても、姉さん毒は入ってないですよね?、な〜んて聞かれるし、私寂しいですよ〜』なんて言われちゃったよ」これは半分冗談だが、半分は大本気である。本気と書いてマジである。「ふふふ、それじゃぁ可哀相ですけど、その琥珀さんには、もっと寂しがってもらいましょう」「はいはい、わかりました。仰せのとおりに」「はい、よろしい」こうして、シエルとの日々は続いていく。辛いこと、苦しいことがあっても、きっとその先には幸せがある。そう信じられる日々が…ずっと……。END
著者・あとがきいやぁ、お疲れ様でした。先日ホッタさんから頂いたシエル先輩によって、「何か書こうかな」と思ったのがそもそもの始まり。その後別の友人との電話中に突然執筆の火が点き、一気に書き上げました。これからも何かにつけて書くと思われますが、付き合ってやってください。それでは〜〜!!