ヒップも志を奪うべからず

  一

 ――良いお尻だ。

 門前を掃除している幽谷響子を眺めていた白蓮は、大きく頷いた。
 響子はリズミカルに箒を使うので、腕だけでなく腰も動く。そのとき、頭の山彦耳がぴょっこぴょっこ動き、尻がぷりぷりっと揺れる。
 それを朝一番に見られたときなど、別に死んでしまっても良いような気がしてくる。
 しかし、哀しいかな、白蓮が来ると響子は「しっかりやらなきゃ」と背筋を伸ばしてしまうから、尻の動きが止まってしまう。
 よって白蓮としては、ぎりぎりまで感付かれないように接近しつつ、驚かさない距離で自然に挨拶しなければならない。
 これは既に剣術家の境地に及んでおり、毎朝のようにこれをしていると、引き絞った弓から矢が放たれるのを止められないように、響子のプリケツにチェストしたくなってくる。
 しかし、そういう葛藤を続けていくと、ふとした瞬間に目に留まるお尻にこそ価値があるような気がしてきた。
 響子がこちらに気付いて挨拶をするまでの、ほんの一瞬。
 緊張と恥じらい、若々しい肉のうねりによってお尻がぽよよんと動く瞬間。
 そこにこそ悟りへの道が開けるのである。
 白蓮の頷きは、こうした切磋琢磨の末の頷きであって、我々が一朝一夕で真似できるような頷きではない。
 響子の方はというと、白蓮が掃除の具合に満足してくれたのだと思って、跳ねるように白蓮に近寄った。
 こういうとき、白蓮から「おはよう」と言ってやる方が、響子は喜ぶ。何故なら、山彦の本能を最大限に発揮して「おはよう」と返事ができるからだ。
 そんなおはようを期待して、まるで犬のように、期待に瞳を転がす響子を見ていると、調教したくなってくる。
 白蓮はそこら辺の葛藤には慣れているから、今日も今日とて、無難に「おはようございます」と言い放った。
「おはようございます!」
「今日も元気ですねえ」
 このまま縁側に持って帰って、ずっと膝の上に乗せておきたい。菩提樹の下にいるよりも悟りを開けそうではないか。
 近頃の響子は悪友とライブをやったりしているそうだが、この可愛いお尻に害が及ばなければ、白蓮は大概のことに目を瞑れる。
 こうして寺を建ててすぐに、こんな子が来てくれるとは思っていなかった。
 今は毘沙門天の代理を務めている星にしても、出会えたのは僥倖だったと言える。封印が解けたこと自体、幸運である。

 ――これらはきっと、自分の道が仏道に適っているからであろう。

 白蓮がお天道様に向かって手を合わせていると、そのお天道様が瞬きをした。
「おや?」
 お天道様に生じた瞳から、妖怪が上半身を出した。
 スキマ妖怪の八雲紫が、手を軽く振った。
「おはよう」
「おはようございますっ!」
 紫は白蓮に気がいっていたようで、横から響子に大声を浴びせられて、スキマから落ちた。
 白蓮が手を貸してやると、紫はやれやれと起き上がった。
「うーん、朝っぱらから山彦の大声は効くわねえ」
 服に付いた埃を払いながら、紫がとぼける。
 白蓮が響子にお茶の準備をするように告げると、響子は建物の中に走っていった。
「別にいいのに」
「いえいえ、あなたほどの方が来てくれたのに、お茶も出さないわけには」
 お世辞ではない。幻想郷が平和なのも、紫が調停役を立派に務めているからで、白蓮の中には尊敬の念がある。
 紫は紫で、白蓮のそういう所が苦手なので、かえって遠慮してしまうのだが。
 彼女が今日来たのは、ちゃんと用事があってのことだった。
「実は、お願いがあって来たのよ」
「と言いますと?」
「ある天人を、預かってもらいたいの」
「天人ですか?」
 人間でない、という意味でなら、天人も妖怪である。
 しかし、天人はそんじょそこらの妖怪とは比べ物にならないくらい強力な存在だから、救済の順序としては結構後ろの方に位置する。
「天人にも煩悩はあるわけですから、うちとしても受け入れない理由はありませんが……」
 その本人が来ないことには、始まらない。
 同伴してきたわけでもないようで、紫は代わりに冊子を取り出した。
「この中に写真が入ってるわ。なんなら、顔だけ覚えておいてもらえれば十分よ?」
「まるでお見合いみたいですねえ」
 とにかく、写真だけでも見てみることにした。
 折角持ってきてくれたのだから、無下にするわけにもいかない。
 それに天人自体、この目で見たことが無い。
 好奇心もあって、白蓮は冊子をぺらりとめくったのだった。


 そこには、天使がいた。


 正面向きではないことから、断って撮影された写真ではない。
 しかし、宙に浮く石に座ったその姿は、美少女として必要なものを全て、備えていた。
 大きな瞳、柔和な頬、光を纏う後髪、広いおでこ、遠くに想いを馳せる面差し……何より、その尻は完璧であった。
 響子の尻を蜜柑とするなら、この天人の尻は桃だ。触れた瞬間に失われてしまいそうな危うい張りが、スカートの中に潜んでいるのである。
 食い入るように写真を見つめていた白蓮に、紫が囁く。
「この子のこと、知りたい?」
 白蓮は、大きく頷いた。



  二

 比那名居天子は近頃、天界の雲の淵で考え込んでいた。
 いわゆる天人の五衰というやつで、天人もいつかは苦しむことになる。それまでの長過ぎる時間にすり潰されないために、天人はくだらないことで時間を潰し続ける。つまらない人間と大して変わらない。
 そういう連中みたいになりたくなくて、盗んだ緋想の剣で走り出したというのに、気付いたらこうして、生活は落ち着いてしまっている。
 経験上、天子が思うに、異変に頼っていては駄目なのだった。
 異変は所詮、異変である。生き様ではない。
 ロックな人生、いや天人生のためには、日頃からロックでなくてはならない。クレイジーでなくてはならない。

 ――やはり、地上へ。

 その想いだけが少女の中で募り続ける。
 天人が天界にいても、朱に交わるだけである。
 地上で天人として、天子として生きる。それこそがロックと言えるのではなかろうか。
 ちなみに、緋想の剣を返すつもりは全く無い。

 雲の淵から、下界を見下ろす。
 あのいけ好かないスキマ妖怪は「幻想郷は全てを受け入れる」とかいうのが口癖だそうだが、その言葉に魔力があるのは天子にも否めない。
 ここから見える下界、幻想郷は、あの無茶苦茶な連中がいるというのに、陽射しと雨と緑と土と闇の中で、呼吸し続けている。

 ――この思索が終わったら、ゆっくりと落ちていこうか。

 天子が静かな決意に瞼を閉じかけたとき、一番天界に近い、妖怪の山の頂上辺りで、キラリと何かが光った。
「ん? ん?」
 天子の視力はかなり良い。彼女が見たのは、まるで鷹が目の前に飛んできたかと錯覚するほどの速度で飛び上がってきた、人間の姿だった。
「なんっとぉーーーーーーーー!!」
 咄嗟に緋想の剣を振ると、重々しい衝突音が辺りに広がった。
 相手と剣の間に気質が炸裂して、火花のように飛び散る。
 そこに浮かび上がる、見覚えの無い女の顔。
 天子はワクワクと驚きに任せて、笑った。
「あははっ! どちらさんかしら!?」
「聖……白蓮! はじめまして、比那名居天子さん!」
 挨拶の間に、浮かんでいた要石の幾つかが粉砕された。
 二人はもつれながら飛んだ後、天界の足場に着地した。
 白蓮は緋想の剣の刃を、あろうことか素手で掴んでいる。彼女の魔法の光と血、そして気が、一体となって手から立ち上っている。
 八雲紫のような胡散臭さとは違い、どストレートな魔力を感じて、天子は白蓮を魔法使いだと認識した。
「天子さん! あなたのお尻を私にください!!」

 ――あっ、魔法使いじゃないや。変態だ。

 天子は背中に冷や汗を噴いた。
 少しでも怯むと一挙に押し込まれそうだったので、不服ではあったが、剣を掴まれたままの体勢で話をすることにした。
「私の尻がなんだってのよ!」
「あなたのお尻は煩悩の塊です! うちのお寺で修行して、私に触らせてください!」
 言っている意味がさっぱりわからない。「私のお尻、どこか変なのかな?」と余計な心配をしかける。
「……お寺? お寺ってもしかして、命蓮寺って所?」
「ご存知なら話が早い! さあ、お尻を!」
「誰が!」
 下界に魔法使いがお寺を建てたぐらいのことは天子も耳にしている。ちょっかいを出しに行こうかと思ったが、それからまたすぐに異変が起こったものだから、様子見のままになっていた。
 とにかく、この状態なら相手の方が先にへばる。こちらは緋想の剣と間合いのおかげで余力が十分にあるが、向こうは現在進行形で力が漏れまくっている。
 相手が弱り切ってから懲らしめてやれば、何か面白いことになるかもしれない。
 そんな雑念のせいで、天子は勝機を逃した。
 白蓮が自分の不利にも関わらず、更に間合いを詰めたからだった。
「そんな無理をしても――!」
 意味が無い、と言いかけて、天子は唖然とした。
 白蓮の片手が、天子のお尻を掴んでいた。

 むにむに、むんにり。

 指の一本一本が舌にでもなったかのごとく、スカートの上からお尻を舐る。
 真冬に洋式便所に座ったときのなんとも言えない感触に近いものが、天子の背筋をトロトロに痺れさせた。
「おっふぅううん」
「おお……なんと素晴らしい手触り! そして温もり! こんないけないお尻さんは私の手で封印されるべきですね!」
 歓喜の声を上げた白蓮のこめかみに、飛来した要石が突き刺さる。それは天子が咄嗟に呼び寄せたものだった。
 白蓮はそのまま十メートル以上も転がっていったが、天子に追撃の余裕は無かった。
「あ、危なかったわ……何あの、お尻から何もかも持っていかれちゃいそうな感覚……!」
 文献によれば外界のトイレにある「媚手」とかいう装置を使うと、尻子玉が抜けそうになるというが、きっとそれに近い。
 それほどの手付き……魔法使いとは、なんと恐ろしいのだろうか。
 他にも何人かの魔法使いを天子は知っているが、魔術と肉体の両方が充実している白蓮という存在に、天子は驚愕せざるを得ない。っていうか近寄りたくない。
 それにしても、片手であれなら、両手で揉みしだかれようものなら、どうなってしまうのだろうか。
 天子は尻と膝に力を入れると、白蓮に備えた。
 冷静に対処すれば、五分以上には戦えるはず。
 そんな風に自分に喝を入れていた天子の耳に、悲鳴が聞こえた。
「これは、衣玖の声!?」
 その声は白蓮が転がっていった方から聞こえてきた。
 そちらは雲のカスと天界の気で霞がかっていたが、そこから白蓮がゆっくりと姿を表した。
 彼女は小脇に衣玖を抱えており、天子の方に投げてよこした。
 慌てて天子が衣玖を受け止めると、衣玖の表情は弛緩しきっており、普段の凛々しさは微塵も無くなっていた。二時間ぐらい温泉に浸かっていれば、この顔を再現できるかもしれない。
「い、いったい衣玖に何を!?」
「ちょっとお尻を揉ませてもらっただけですよ。あなたのを触った興奮が抑えられなかったもので……」
 合掌された白蓮の両手から、先程までよりも多くの魔力と気が立ち上っていた。
「まさか、両手で!」
「ふふふ、その通りです……この合掌の中には、お尻の感触という名の無の境地が広がっているのです。この意味がわかりますか?」
「……全然わからない……」
「修行が足りませんね」
 実に残念そうに言う白蓮に、天子の恐怖が大きくなる。
 精神的な要因だけでなく、明らかに白蓮の力が増しているからである。

 ――こんな奴に、どうやって勝てば良いんだ?

 彼女の焦りを嘲笑うように、霞が濃くなっていく。
 もしやこれも白蓮の仕業か。
 疑心暗鬼を生ず、というやつだが、そこに現れたのは、本物の鬼だった。
「萃香!」
「やあやあ。お困りのようだねえ」
 楽しそうに言って、伊吹萃香が瓢箪の中の酒を呷る。
 彼女が姿を現すと同時に周囲の霞はいくらか薄れたから、彼女がさっきからここで見物していたのがわかった。
「さしもの天人も、ああいうのは苦手かな? それとも天子ちゃんがウブなだけかなー?」
「うっさい! 邪魔しに来たなら帰ってよ!」
「私は楽しそうだから来たのさ。だから――」
 つい今の今まで目の前にいた萃香が、白蓮の真横に出現した。
 無言で繰り出された拳が、白蓮の拳とぶつかり合う。
 一瞬の間の後に、怒涛のごとき衝撃波が辺りの雲を吹き飛ばす。萃香の体に付いている鎖が、楽しそうに鳴っている。
「ヒューウ! 全力じゃなかったとはいえ、私の拳を止めるとはね!」
「鬼と出会えるなんて、今日は実に喜ばしい日です!」
「言うねえ……!」
 二つ、三つ、四つ……。
 二人の拳がぶつかり合う度、楽器のように音が放たれる。
 雲が裂け、雹が飛び、風が叫ぶ。
 天子はこの隙に、衣玖を叩き起こすことにした。
 ほっぺたをベチンベチンと引っ叩くと、弛緩していた顔がじきに凝り固まっていって、瞳に光が戻った。
「はっ!? 私は何を!」
「何を! じゃないわよ! あんたのせいであいつがパワーアップしちゃったでしょうが!」
「あいつ……ああ、あの漆黒の乙女……私のお尻をもいで、食べてくださいまし……」

 ――駄目だ、こいつ。

 天子は諦めて、衣玖を下界に蹴り落とした。まあ、ここにいるよりは安全だろう。
 ところで、萃香はどうやら優勢のようである。
 先程まではほぼ同時に繰り出されていた拳が、段々と、萃香の方が早くなっている。
 パワーとスタミナでは、鬼に敵うものなどいないわけか。
 天子は安心したと同時に、焦燥感も覚えた。このまま萃香が勝ってしまうと、そのことでねちねちと絡み酒をされるに違いないのだ。

 ――そうだ! あいつが勝った瞬間に不意打ちしよう!

 ナイスなアイディアに思わずガッツポーズした天子だったが、お生憎である。
 鬼は鬼であるが故に、負けるのである。
 萃香が戦いに熱中し、力を高め続けている隙に、白蓮は足元に忍ばせておいた魔人経典によって、自分と萃香の周りを囲んでいたのだった。
 紫色の光に包まれたとき、ようやく萃香は白蓮の罠に気付いた。
 だが、それがどうしたというのか。
 萃香はこれまでに無いほどに興奮していた。今なら天界ごと眼の前の魔法使いをぶち壊してしまいそうだ。
 そう思って放った拳が、見事に外れた。魔人経典によって飛躍的に高められた白蓮の瞬発力が、それを可能とした。
「はれ?」
「隙ありぃ!」
 白蓮が両手でもって、萃香の薄いにも程がある胸を包んだ。肉というより皮膚と胸骨の感触が白蓮の手に伝わる。
 が、お構いなしに白蓮は魔力を萃香に注入した。
「あへぇええ!」
 誰一人触ろうとしなかった胸に濃密な魔力がパンパンに詰め込まれる。
 酔いと魔力が合わさって、味わったことのない快楽が萃香の角にまで満ち溢れた。
 そして萃香は耐え切れなくなって、霧となって消えてしまった。
「ウブすぎる! これが鬼ですか! これなら一晩で百鬼夜行を相手にできますよ!」
 言っている意味はさっぱりわからないが凄い自信だった。

 さて、天子の頭の中は大変なことになっていた。
 不意打ちしようと思っていたら、その相手が負けてしまったのである。
 萃香が現れたことで楽観的な考えを持っていた自分に気付いて、恥ずかしさも覚えていた。

 ――白蓮に勝てる気がしない。

 今まで味わったことの無い絶望に、口の中がカラカラになる。
 緋想の剣の切っ先が下がる。
 そこに、背中から雷が落ちた。
「何をしているんです! あなたは総領娘様じゃないですか!!」
「い、衣玖!?」
 地上に落ちたはずの衣玖が、声援を送るために戻ってきていたのだった。
「べ、別に言われるまでもないわよ! 私はこれから、あいつをこてんぱんにするところだったんだからね!」
「本当ですかあ?」
「当たり前でしょ!」
 わざわざすぐ傍に来てからかう衣玖に、天子は頬を赤らめる。
 とてもじゃないが、おかげで強気が戻ったなんて言えやしない。
 天子が切っ先を白蓮に向け直すと、彼女はアルカイックスマイルで応えた。
「おやおや、まだやりますか? 素直にお寺で修行しませんか?」
「誰が! あんたに勝って、修行なんていらないことを教えてやるわよ!」
「それが修行不足なんですよ」
「え?」
 天子の体に、電撃が走った。
 それは僅かなものだったが、的確に天子の体から力を奪い、緋想の剣も手から落ちた。
 天子を、衣玖が羽交い締めにしていた。
「ちょっ、ふざけないでよ?」
「総領娘様……あの方なら総領娘様を立派にしてくださいます」
「え? 嘘でしょ? ねえ、ちょっと。ねえ? 衣玖? 衣玖さん? ちょいと?」
 ジタバタしている間に、白蓮がじりじりと近寄ってくる。
 アルカイックスマイルが、段々と歓喜の表情へと変わっていく。
 その顔が目の前まで来たとき、天子はにこりと笑った。
「痛くしないでね?」
 天子が意識を失う前に見たのは、大きく頷いた白蓮だった。



  三

「ねえ、天子があの寺に入ったって本当なの?」
 霊夢の問に、紫は湯飲みを置いた。
 今日も幻想郷は晴れ渡っていて、博麗神社の縁側からの眺めは、特に良い。
「どんな奴にも、止まり木になれる場所はあるってことよ……」
「よくわかんないけど、とりあえず本当なわけだ」
 本当も何も、紫はついさっき、命蓮寺での天子の様子を見てきた。
 毘沙門天の代理とかいう寅丸星がいるのとは別のお堂に、天子はいた。
 洋式トイレに後ろ向きに座っている天子のお尻に向かって、白蓮が合掌し、延々と御経を唱え続けているという異様な空間がそこにはあった。
 白蓮によると朝のお勤めだそうで、つまり夜もあるということなのだが、紫は聞かないでおいたし、見ないでおこうと思った。
 仏教VS道教とかいうややこしい状況で天子がちょっかいを出す前に手を打ったつもりだったが、まさかあそこまでクレイジーなことになるとは思っていなかった。
 最近、萃香も一緒に酒を飲んでいると顔を赤らめてこちらを見るときがあって、気味が悪い。
 紫は、溜息を吐いた。
「ねえ、霊夢……私の罪も、幻想郷は受け入れてくれるのかしら?」
「アホ言ってる暇があったら一升瓶の一つでも持って来なさい」
 とりあえず、ブン屋辺りにでも情報を流せば、すっぱ抜いて大騒ぎになった末に、何もかも有耶無耶になってくれるかもしれない。
 破滅的なプランだったが、他に無い。
 紫は大きく頷くと、スキマを潜ったのだった。