第一話「お茶と葉っぱの因数分解」

「第三次産業及び福祉事業の現場運用に耐えうるロボット」

 それを目標に来栖川グループの第七研究開発室が開発し続けた「HMシリーズ」、俗に言われる「メイドロボ」は、その目標を十二分に達成せしめた。導入当初、産業各代表団体の「マニュアルを飲み込んだだけの職員には臨機応変な業務遂行は危ぶまれる」という懸念も、いざ現場での実用テストを迎えてみれば懸念そのものが逆に働き、「徹底されたマニュアル順守」が高く評価されることになる。
 メンテナンスにかかる費用や時間的損失(以降、「費用など」と記述す)についても開発が進むにつれて徐々に解消されていく。これには来栖川グループが厳格に設定された保証体制を導入したことがあり、後に評価されている。
 また、人材を雇用する際や教育においてかかる費用などが年々、企業の経費を圧迫している状況もメイドロボ導入には拍車をかける結果となった。この点は、若年層からの教育にかかる費用などが家庭や保護者に対して脅迫的な観念を作るに至るとして、各団体から非難を生むことにも繋がるが、それに対しては来栖川グループは長年、「関知せず」という考えを取り続けているようだ。
 肝心の福祉事業においては、総務省が〇五年度に実施した現場アンケートによれば、「専門的な知識を簡単に現場に反映できる」という具体的な例も示され、老人介護についてある専門家は「心的なストレスと無縁である」とすらした(これについては心的な介護を必要とするのが介護である、とする声もある)。

 これらがメイドロボが発展した理由だった。

 ――だった、と記さなければならないのは、メイドロボが実社会における様々な役割を担うようになり、様々な問題が出てきたためである。十年代には翳りが見えていた。それは純白のドレスのほころびである、とは、あるHM研究開発室員が昨年に出版された週刊誌のインタビューに文面で答えた際に記述された言葉である。この言葉は開発に携わった者たちがどういった目で自分たちの技術の結晶を捉えているかも表している。おお、なんとすばらしき父性愛か!
 なるほど、メイドロボを女性として捉えるならば、彼女たちが自己の発展を終え、結婚という社会的立場を確立するにあたって、その披露宴においてドレスのほころびに気づきえたかといえば、答えは否であろう。

 そしてほころびは彼女たちを丸裸にすることになる。

 来栖川が実施した「保証」体制はあくまで「運用における保証」であって、彼女たち自身を「保護」するためのものではない。それについて法的にも穴があったことは各野党が指摘している通りであると小生は思う次第である。

 よく勘違いされる事柄であるが、ある製品があったとして、それに使われた技術は一つではない。ロボット工学技術と一口に言おうと、弾道学におけるその名称が担う役割同様、それは砲内弾道学、砲外弾道学、終末弾道学、過渡弾道学などといった諸々の学問の総称でしかない。つまり、総称の中には一つ一つの名称があり、それを技術と称した場合も同義であるということだ。
 そして、何が云いたいかといえば、製品からは様々な技術を盗むことができるということである。ここで誰もが気づくことは「そんな簡単に盗めるならば、誰も苦労しない」ということだ。それはその通りで、万が一にもそういったことが起きないように企業はあらゆる手を尽くして「技術のブラックボックス化」を行っているし、正規の設計図や部品は厳密な管理がされている。ましてや、技術の最先端といえるロボットともなれば……。

 ここに落とし穴がある。

 最先端?
 厳密な管理?

 では最先端とはどういうものを指すのか。厳密な管理とはどのようなことをしていれば良いのか。現場における慣例という甘さもある。また、最先端という言葉の魅力に取り付かれた者は、工場から国の中枢に至るまで様々なところに巣食っている。

 核を思い出せ。今やどの国も開発できるし保有もできる。それは何故だ?
 弾道ミサイルはどうだ。マイクロチップは。身近なところで自動車は。気づけば似たような車が開発され、堂々とプロモーションされている現状は。
 これらの問題に直面している各国や企業のトップは当然、この理由を知っている。その理由を知った上で隠すということだけは示し合わせたかのようにしているクセに、個人レベルではモラルに依存させて満足しているのだ。

 ただの陰謀説として捉えることなかれ。我々は個人に頼るという、旧世紀の封建制度に知らず知らず従わされているのだから。

「……」
 とあるオフィスのとあるデスクで、一人の女性が長い髪と時間を持て余したように首を本に向かって下げている。その向こう側で年末でもないのに几帳面に窓拭きしていた比較的小柄な……比較的といっても、だだっぴろいオフィスにはこの二人しかいないのだが……少女のような体型の女性が、エプロンを締め直しながらデスクにいた女性に声をかけた。
「何を読んでいるんですか、セリオさん」
「……『メイドロボ、異論反論蝶繋ぎ』です。マルチさん」
 おどおどとした印象のある者と違い、答える側は落ちついた外見が声音に反映されていた。
「ど、どんな本なんですか?」
 人がよく口に出す本のタイトルとはかけはなれたそれを聞いて、興味が湧いたらしい。実際のところ、なんでそんな本を読んでいるのか、ということが気になっているようだが、口には出さずとも、セリオにはわかっていた。そうであるからこそ、彼女もそれを口には出さず、相手の言葉に添えるよう努力したのだった。
「タイトルの割には理路整然としています。作者がどういった方か、現在サテライトを使って検索していますが。――どうやら先に『陰謀である』というような読者の興味を惹くような結果だけを考えて、それに合わせてテーマを選んでいるようですね」
 言葉を区切った際に一瞬、セリオの目がかすかに明滅した。彼女も、そしてマルチも、件の本に書かれているメイドロボなのである。セリオはHM-X- 13、マルチはHM-X-12という型番が正式なものであるが、これは現在、開発室の資料によると永久欠番とされている。これには色々と事情があるのだが。――
 サテライト、と聞いて、マルチは無意識に上を見てしまう。現行のHM-13シリーズが使用しているライセンスでは大規模検索や来栖川他のデータベースへのアクセスは禁止されているし、そのような機能はつけられていない。
「えーっと、なんでもかんでも噛みつく、ちょっと困ったお犬さんみたいな人ってことですか?」
「ただ、たまにちゃんとした泥棒に噛みつくようです」
「油断できないお犬さんですね……」
 えげつない本を書く作家をお犬さん呼ばわりするのだから、彼女も油断ならない。セリオは、それとは違った考え方から似たような言葉を口に出した。
「ええ、まるでマルチさんのよう」
「私ですかぁっ?」
 当人は素っ頓狂な声を上げる。こういった感情の起伏はある程度まで行くと暴走を防ぐために自動的に推論をカットするようシーケンスが組まれているはずなのだが、彼女にはそれがない。彼女もまた、Xという型番の意味を正確に把握してはいない。
「はい。マルチさんは私よりも的確です」
「どういう意味なんでしょうか」
「心が豊かだ、ということですよ」
 セリオはそう言って、会話を打ち切った。マルチは何か邪推したようだったが、セリオはそれについて「的確な」理由を求めることはできずにいた。
「マルチさん」
「は、はい! お掃除ですね、お掃除!ええ、ちゃんとやりますよ、綾香様がしばらくは帰ってこられないからって、ここらへんで切り上げようなんて思ってもいません、はい!」
 わたわたと慌てふためいてから、自分で置いておいた雑巾に足を滑らせるまで、二秒と四フレームとセリオは計算し、二フレームの差でその通りになる。本を閉じ、デスクの椅子から立ちあがったセリオは、マルチに手を差し伸べた。
「……お茶にしませんか?」
「……そうですね」

 お茶といっても、人間が飲むものをそのまま飲んでもなんら意味が無いと思われがちだが、お茶に含まれるビタミンEやタンニンは吸収にあたってそれなりの効果があるし、暖かいお茶であれば、それを発散させる際に擬似的な快感と落ちつきを覚えられる。とはいえ、指摘は当然だ。なんせ、一般のメイドロボにはそんな機能も、お茶を飲もうなどという考えも起こらないのだから。
 そんな理屈はさておき、自分がお茶を入れようと給湯室のお茶っ葉が詰まった缶のある棚へと手を伸ばしたマルチの肩にセリオが手を置いた。
「なんですか?ああ、安心してください。『高い方』を使いますから」
「いえ、私がいれます」
「珍しいですね、セリオさんがそんなこと言うなんて」
「やることが無いんです」
 切実である。切実であるからこそ、誰も口にしないことも彼女には関係無い。今のこのオフィスの状況を的確に表現できる言葉はそれなのだから。しばしマルチは苦笑いを浮かべたが、何時の間にか得意になってしまったお茶を入れる仕事を他の者に譲るのは忍びなかった。
「セリオさんはいざってときにはうんと頑張っちゃうんですから、今のうちに休んでおけばいいんです」
「私の設計限界年数はまだ七八年と二三五日残ってますから大丈夫ですよ」
「そういうことじゃないんです。私の気持ちの問題なんです」
 マルチはそう言ったが、設計限界があることを今知ったため、違った観点を提示せざるをえなかっただけである。
「……では、私の気持ちの問題ということで、ここは私に譲っていただけないでしょうか」
「いえ、そう堅苦しくされるとですね――」
「ああ、もうっ、なにやってんのよっ! 貸しなさい、私が入れてあげるから、ありがたく飲みなさいよっ!」
 給湯室のドアを叩き割らんばかりに押し開いたスーツ姿の女性が、二人の間からお茶の缶を奪い取ると、乱暴に缶の蓋を開いてそれを放り投げる。
「綾香様……」
 セリオが呟いた名前は、現在の来栖川グループ総合本社専務である人物の双子の妹の名前だった。彼女は現在、このオフィスの役割である特殊業務の管理責任者である。セリオがそれとなく蓋をキャッチしたのをマルチがほっとした表情で見た後、彼女が口を挟む。
「ああ、綾香様、そんな入れ方じゃ葉っぱが痛んじゃいますよ、それに量が……」
 ごそごそと大雑把に缶を振って急須に入れる綾香を見ていられないようだ。こうして見ていると、OLデコボコトリオが給湯室で微笑ましい光景を演じてるように見えなくも無いのだが、当人たちにそういう意識はない。
「ごちゃごちゃうっさいわね、お茶にまで気を遣っていられるほど、私は良い人じゃないのよ」
「何かあったんですか」
「そーなのよ、ちょっと聞ーてよ」
 マルチの言葉に綾香は缶を置くと、おばさん臭い仕草をしてみせる。セリオがひょっこりと顔をマルチと綾香の間に出してその仕草に答えた。
「私でよろしければ、お話を伺います」
「そ、そう? うん、それじゃお願い。あ、そうそう、マルチはお茶を頼むわね」
「綾香様ぁ……」
 情けない声を出すマルチを気遣うようにしていたセリオの背中を押す綾香は、そんなことは知らん振りなのだった。

「――でさぁ、一ヶ月も前に姉さんに言ったことが今更、管理部門のおっさんの耳に入ってるわけよ。ちょっとこれ信じられる?」
 少しでも喋る量を増やしたいとしか思えないようによく口を回す綾香に、セリオは極力相手が不快にならないタイミングで口を挟むといった具合に話は進んでいく。
「おっさんというのは坂口部長のことでしょうか」
「ああ、そんな名前だったっけ、あのちょび髭。まったく似合ってないわよねぇ。それに、いやらしいったらありゃしない。そんなだから、社員にセクハラ野郎だなんて思われるのよ」
「それで、その耳に入ったお話というのはどのようなものなのでしょうか」
 結局のところ、セリオが口を挟まない限り、どうやっても話は進まないようである。逆に言えば、セリオがいさえすれば、いくらでも好き勝手に話をすることができるということになり、綾香はそのことをよくよくわかっていた。
「ほら、私たちが業務に入るにあたって現在どれだけのメイドロボの素性が消息不明なのかが書かれた資料よ。あれが無いと動けないわけよ。わかる?わかるわよねぇ、流石セリオ。旦那より使い勝手が良いわ」
「浩之様はよくやっていらっしゃると私は思いますが」
「だめだめ。あいつはちょっと目を離すとさぼろうとするんだから」
 突然に矛先を向けられた哀れな人物に盾を差し出したは良いものの、そんなもので止められるほど綾香が御しやすい人物ではないことをセリオはこれまでの付き合いで知っていた。第一、彼女が本気で自分の旦那を責めているとは思えない。現在こそ名誉会長として本社の経営を長年可愛がってきた部下と綾香の姉である芹香に任せている来栖川グループ総裁の大反対をものともしない大恋愛逃避行の末に彼女たちが結婚していたからだ。セリオは当時、そのスキャンダルにマスコミが群がるのを必死に防ぐ役割を担ったことを苦笑と共に思い出したが、顔には出さず、話題を元に戻したのだった。
「……肝心の資料はどうなりましたか?」
「ちゃんとここにあるわ」
 綾香は無骨なトランクを開いて、そこから仰々しい確認のための判子が表紙に押された書類の束をぽんとテーブルに投げ出す。その書類については後に確認することになるだろうからと考えたセリオは、現在の話を落ち着かせようとする。
「では、こんなに遅くなられた理由は?」
「姉さんにちょび髭の文句を余すところ無く伝えてきたからよ」
 二人のことだから、きっと、一方的に綾香が話して、それを芹香が書類に目を通しながらもきちんと聞き、何の感想も述べず、最後に「……気をつけてね」とだけ言って綾香を送り出したことだろう。それを確かめられるのは、公私共に芹香の執事兼秘書であるセバスチャン(本名不詳)だけだ。
「あのぅ」
「何よ?」
 申し訳なさそうに挙手をしてみせたマルチに、綾香が素っ気無く返事をする。別段、嫌っているわけでなく、これが彼女の性格だった。
「それで、これから私たちはどのようになるんでしょうか」
「どのように、っていったって……このように、よ」
 事前に準備しておいたらしい、ビデオのスイッチをリモコンで操作すると、三人が座っている席のすぐそばにある大画面のテレビがうなりをあげて映像と音声を出し始めた。

「急増するメイドロボの行方不明事件、皆は知っているかな!?」
「ボブ、そんなの当然じゃない」
「ははは、ジェニー、そんなこといったら解説にならないだろう?」
「でも、メイドロボが行方不明になる理由ってなんなのかしら」
「ジェニー、その調子だよ!そうだね、先ず、メイドロボは勝手にいなくなってるわけじゃないんだ、ってことは覚えておいてもらいたいなっ!」
「あら、それじゃどうして行方不明になっているの?」
「それはね、僕らの大切なメイドロボを技術転用の素材としてしか見ていない悪党どもがいるからさっ!」
「まぁ大変っ! どうしたらいいのかしらっ!」
「安心するんだ、僕らには正義の味方、来栖川グループ管理部門特別調査室の皆がついている!」
『ピンポーン(機械音)! 来栖川以下略とは消息不明となったHMシリーズを調査し、その行方を突き止め、悪党どもに正義の鉄槌を下す組織なのだっ!』
「さぁ、皆もこの番号に電話して、正義の味方を応援しよう!」
「手続きは簡単(ハートマーク)この番号に電話すると、来栖川グループの担当部署に繋がるわ。あとはガイダンスに従ってねっ! 皆の愛の手、待ってるわよ」
「ジェニー、僕も君の愛の手が欲しいなぁ」
「やだ、ボブったら!」
「それじゃ皆、バーイバーイ!」

 無駄に台詞に力をこめる男優とやたらと目配せをする女優の壮絶な展開が一通り終わると、綾香はリモコンでビデオの電源を切った。ちなみに、劇中にあった担当部署とは、どうやら株取引に関する部門のことらしい。つまるところ、このビデオが作られた段階では出資者を募っている最中だったということである。綾香の様子からすると、ある程度の見込みはついたらしいことはわかった。もっとも、彼女自身の有効株に加えてコネや閥を活用すれば、新しく会社を興せるだけの金は集まるので、セリオもその点は心配せず、こうしてオフィスへ来るよう誘われたときも何の感慨も無く机に陣取った。しかし。
「あ、綾香様、これは……」
 さしものセリオも、よそよそしい態度をせずにはいられない。彼女にもマルチほどではないにしろ、微細な感情は芽生えているからだ。彼女はスーツのネクタイを直してから、綾香の言葉を待った。マルチはというと、一部回路がショートしかけたのか、緊急シャットダウンの後、現在復旧中である。あと五分は動けない。
「これ?姉さんに興味を持ってもらうために私が作ったプロモーションビデオ」
 管理部長への通達が遅れた原因はこれだ。セリオはそう思う。このビデオをそのまま部長に見せようものなら、怒りで血管が切れて入院するか、来栖川グループの未来に疑いを持って自主退社するかのどちらかだろう。そうしないためには、このビデオから必要な部分を抽象して、書類にまとめなおした後に彼に見せる必要があった。
「だってー、姉さんっていつもつまらなさそうな顔してるでしょう? ちょっとでも興味を持ってもらいたいなぁ、って思ってさ」
「そうですか」
 そうとしか言えない。だいたい、このビデオで興味を持ったらそれはそれで人間として非常に問題があるだろう。セリオがそういったことを色々と考えながら返事をすると、綾香が食って掛かった。
「なんでそういう反応するのよっ。あ、そういえば浩之もそんな顔してたわ。まったく、皆で私を馬鹿にして」
「いえ、そういうわけでは……」
 ない、とは言い切れないものの、されとて、綾香の手腕たるや、芹香とは違った面で他者の追随を許さない。ただ、見ている側にしてみれば、とてもじゃないがついていけない面があるのも確かなのだった。そういったわけで、彼女がセリオやマルチを可愛がっている理由も、なんだかんだで自分を信頼してくれているとわかっているからだ。結婚する際に綾香の立場上、来栖川姓にしたものの、浩之と婚姻届を出すまで彼の姓である藤田になることを希望したのも、彼が信用できるし、信用してくれてもいるとわかっていたからであるが、これは余計な蛇足であるかもしれない。そんなことは、彼と彼女を見ていれば、わかることだから。
「――でも、いいの。これで皆、私を馬鹿になんてしていられないわ。セリオ、すぐにこれからの計画を決めるわよ」
「マルチさんがまだセーフモードなんですけど」
 一応再起動はしているものの、高速で瞬きをする瞼と、神経網の電気信号のやりとりで震える体を見れば、まだ動かせそうにない。
「いいのいいの。どうせ役に立たないんだから」
「それでしたら、何故マルチさんをここに呼んだんでしょうか」
 セリオにとって、それは今に思ったことではない疑問である。綾香が感情だけでマルチをこのような業務に関わらせるはずがないのだ。
「それは、秘密。セリオったら、なんでも知りたがっちゃうんだもの、たまには秘密ぐらい、良いでしょ?」
「……了解しました」
 理屈になっていない、とも思ったものの、セリオは楽しそうに言ってみせる綾香に譲歩することを苦には思わなかった。その秘密が、後々自分に災いをもたらす可能性があると、このときの彼女が知る術など、あろうはずもなかったのだから。